2025.12.05 12:00《失われた白い都市 ― 光が封じた記憶の門》 《失われた白い都市 ― 光が封じた記憶の門》 オアシスで水袋を満たし、ラクダの首筋に触れる。 砂漠の風に鍛えられた褐色の瞳が、どこまでも真っすぐ先を見ている。 その静かな眼差しに背中を押されるように、旅人はその背へ身を預けた。 昼は白い炎の...
2025.12.04 14:49《浅葱の灯》――境界を渡る蝶の記憶――《浅葱の灯》――境界を渡る蝶の記憶―― 執着からふっと解放された“森”での記憶。 旅人は、胸の奥に残る寂しさとともにゆっくりと歩いていた。 どこかまだ帰る場所を探すように、ひと呼吸ごとに足を進めていた。 木漏れ日の中、長く溜まっていた重たさ...
2025.11.27 12:00《金砂の果実》 ――千里眼の砂猫――《金砂の果実》 ――千里眼の砂猫―― 蠍の女が姿を消したあとも、 旅人は彼女が残した言葉の意味を 理解できずにいた。 「風の主が案内する」── いったい何のことなのか。 考えても答えは出ず、 ただ前へ進むしかなかった。どれほど歩いただろう。 ...
2025.11.26 06:42《蠍火の月》――砂に呼ばれた者――《蠍火の月》――砂に呼ばれた者―― 旅人が砂漠へ足を踏み入れて、どれほどの時が経っただろう。 陽炎と静寂のあいだを彷徨ううちに、空の青さは音を失い、 砂丘の影が夜より深く沈んでいった。 そのとき―― 微かに砂を歩くような“何か”の気配を感...
2025.11.19 01:43《妖精の森とひらめきの種》 ―揺れる心は白い王へ続く扉の影―《妖精の森とひらめきの種》 ――揺れる心は白い王へ続く扉の影―― 森へ続く小道を歩いていたとき、旅人はふいに“巨大な影”に気づいた。 霧の奥で、ひずんだ光の中、 大きなイノシシのような輪郭だけがゆっくり動いている。 旅人はその気配に驚き思わず足を速め...
2025.11.03 12:00《 地底の月》 ――青銅のセレナイト――《地底の月》 ――青銅のセレナイト―― 風が止み、世界が息をひそめた。 空を覆う雲の下で、旅人は二つの光に出会った。 ひとつは、夜の底に静かに瞬く黒の光。 もうひとつは、朝露のようにやさしく灯る紅の光。 それは――トルマリンの精霊だった。&...
2025.11.01 12:00《ルビーの夢》―石の声を聴く―《ルビーの夢》―石の声を聴く― 旅人は、小さな谷にたどり着いた。 そこには、星明かりを受けて赤く輝く石が静かに眠っていた。 手に取ると、ルビーの見る夢が流れ込んできた。 それは、まるで夢そのものが語りかけてくるような、やわらかな響きだった。...
2025.10.31 12:00《星の巡りⅠ – エリオンとの出逢い》 ――星々の記憶を渡る者―― 《星の巡りⅠ – エリオンとの出逢い》 ――星々の記憶を渡る者―― 森を抜けた旅人の前に、夜の果てがひらけていた。 空と地の境は消え、ただ星の海が広がっている。 音も風もなく、宇宙が呼吸をしていた。 その中を歩くたびに、足もと...
2025.10.31 02:00《月の祈りⅡ – 森と空》 ――旅人、森の魔女に出会う――《月の祈りⅡ – 森と空》――旅人、森の魔女に出会う――夜の森は、月の光を吸い込みながら静かに息づいていた。風が梢を渡り、葉の一枚いちまいが銀色にきらめく。遠くでフクロウが低く鳴き、木々の影は、まるで眠る巨人のように連なっている。旅人は、闇の中を歩いていた。胸の奥にはまだ、人の世...
2025.10.30 03:30《月の祈りⅠ – 月光の雫》 ― 旅人、最初の夜に祈る ―静寂の夜、旅人は初めての祈りを胸に歩き出す。心の奥に沈む光を見つけるまでの、最初の物語。――旅人、最初の夜に祈る―― 世界が眠るように静まり返った夜。 旅人はひとり、冷たい風の中を歩いていた。 どこまでも続く暗闇の中、 心の奥に重たく沈むものがあった。 それは悲しみか、...