2025.11.27 12:00《金砂の果実》 ――千里眼の砂猫――《金砂の果実》 ――千里眼の砂猫―― 蠍の女が姿を消したあとも、 旅人は彼女が残した言葉の意味を 理解できずにいた。 「風の主が案内する」── いったい何のことなのか。 考えても答えは出ず、 ただ前へ進むしかなかった。どれほど歩いただろう。 ...
2025.11.26 06:42《蠍火の月》――砂に呼ばれた者――《蠍火の月》――砂に呼ばれた者―― 旅人が砂漠へ足を踏み入れて、どれほどの時が経っただろう。 陽炎と静寂のあいだを彷徨ううちに、空の青さは音を失い、 砂丘の影が夜より深く沈んでいった。 そのとき―― 微かに砂を歩くような“何か”の気配を感...
2025.11.19 01:43《妖精の森とひらめきの種》 ―揺れる心は白い王へ続く扉の影―《妖精の森とひらめきの種》 ――揺れる心は白い王へ続く扉の影―― 森へ続く小道を歩いていたとき、旅人はふいに“巨大な影”に気づいた。 霧の奥で、ひずんだ光の中、 大きなイノシシのような輪郭だけがゆっくり動いている。 旅人はその気配に驚き思わず足を速め...
2025.11.03 12:00《 地底の月》 ――青銅のセレナイト――《地底の月》 ――青銅のセレナイト―― 風が止み、世界が息をひそめた。 空を覆う雲の下で、旅人は二つの光に出会った。 ひとつは、夜の底に静かに瞬く黒の光。 もうひとつは、朝露のようにやさしく灯る紅の光。 それは――トルマリンの精霊だった。&...
2025.11.01 12:00《ルビーの夢》―石の声を聴く―《ルビーの夢》―石の声を聴く― 旅人は、小さな谷にたどり着いた。 そこには、星明かりを受けて赤く輝く石が静かに眠っていた。 手に取ると、ルビーの見る夢が流れ込んできた。 それは、まるで夢そのものが語りかけてくるような、やわらかな響きだった。...