《失われた白い都市 ― 光が封じた記憶の門》
グレイ印 orgnoid
【オルゴノイドペンダント】 オルゴナイトにカラーセラピーとパワーストーンの振動、波動に加え、 レイキエナジーや夜光にもこだわり創り続けています。 この世界で 活き活きと本来の自分の姿で 光輝けるお手伝いができる道具となりますよう。 オルゴナイトの不思議な安心感と魅力で愛と喜びの循環、拡散を より多くの方々にご提供できるよう努めたいと思っております。
《失われた白い都市 ― 光が封じた記憶の門》
オアシスで水袋を満たし、ラクダの首筋に触れる。
砂漠の風に鍛えられた褐色の瞳が、どこまでも真っすぐ先を見ている。
その静かな眼差しに背中を押されるように、旅人はその背へ身を預けた。
昼は白い炎のような光に焼かれ、夜は星の冷たさが骨にしみるほどだった。
それでもラクダの歩みは揺るがない。
旅人もまた迷わなかった。
――あのいつかの蝶が示した先へ。 失われた白い都市の記憶へ。
やがて、揺れる砂の光が白へと変わり、蜃気楼が実を結ぶように門が姿をあらわした。
大理石の柱は陽に溶けるように淡く輝き、その中央には透明な水が静かに流れている。
風も砂もここだけは触れられないかのような、澄んだ静けさ。
都市全体が微かな祈りのような響きをまとい、
長い旅の果てに辿り着いた者だけが──ふと視界に捉えられる場所だと誰かが言っていた。
旅人は息を吸い、門へ歩み寄った。
水面から立つ光が足元を照らし――白い風が一筋、頬を撫でた。
次の瞬間、噴水の奥にある大扉が、わずかに開いた。
そこから現れたのは白銀の衣を纏う人物だった。
雪のような白髪、淡い光を纏った肌。
ただ目だけが深い静寂を湛えている。 旅人は悟った。
――この者こそ、この都市の主。
願いが叶うと語られてきた“白い王”。
胸の奥が震えた。
旅人は膝をつき、長く抱え続けた想いを吐き出すように告げた。
「どうか……失った人に、もう一度会わせてください。」
白い王は、悲しませぬよう言葉を選ぶようにゆっくりと答えた。
「叶えてやることはできない。」 旅人の胸を痛みが刺す。
王は静かに続けた。
「ここには“人”はいない。 あるのは、命の記憶だけだ。 わたしはそれを水へ溶かし、大地へ送り続けている。」
噴水の水面が震え、光が青い線となって脈動する。
「水が絶えるとき、大地は眠りにつく。 だが大地が目覚めれば、女神も戻る。 “水”を運ぶ者は女神。 だが“水そのもの”を生むのは、大地の神――アーススピリットだ。」
旅人は息を呑んだ。 森の小川、青洞の湖、そしてこの都市の泉―― すべては一つの流れで、互いに呼応していたのだ。
「お前が追い求めるべきは、失われた人ではなく“眠った大地”だ。」 その言葉が胸へ落ちてゆく。
自分の旅の意味が、静かに形を変えようとしていた。
白い王は旅人の揺らぎを見つめ、さらに続けた。
「それに──お前はもう“失った者”と会っている。」 旅人の目が大きく開く。
「星の巡りの夜、青き光を抱いた旅人と出会っただろう。 彼こそ“青い王”。 かつてこの世界の水と記憶を司り、やがて人として生まれ、そして人として生を終えた者。」
――あの夜。 星の下で出会った、青い光の旅人。
白い王は穏やかに頷く。
「その魂は、お前の祖父だ。」
胸の奥を熱が駆け抜けた。
喉が震え、息がうまくできない。
「彼は死んだのではない。 肉体を離れ、天と地を結ぶ者へ還った。 お前の呼び声に応じ、最後の記憶を携えて現れたのだ。」 涙が頬を伝った。
旅人は拳を握りしめる。
痛みは、ゆっくりと温かさへ溶けていく。
「今や青い王は“水の途(みち)”の守護者。 わたしの光の道と交わる場所で、お前が進むための鍵を託した。」
旅人は胸元の青い灯を見る。
その奥には、確かに青い王――祖父の面影が宿っていた。
白い王は指先で噴水の水をすくい、空へ放つ。
しずくは白光となり、門の上を弧を描いた。
「行け。求めるべきは過去ではない。 眠った大地を目覚めさせる者―― それが今、お前の名に刻まれた道だ。」
旅人は立ち上がった。
背筋にはこれまでになかった強さが宿っている。
「恐れるな。青い王も、お前を見守っている。」
風が頬を撫でた。
それはあの青い旅人の手のぬくもりにも、浅葱の蝶の気配にも――よく似ていた。
旅人は門から伸びる白い道を見つめ、静かに歩き出した。
――世界はまだ終わらない。 旅はここから始まるのだ。
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